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ソニーのスカパー!HDチューナー内蔵BDレコーダーBDZ-SKP75のレビュー

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ソニー製BDレコーダーとして初めてスカパー!HDチューナーを内蔵したBDレコーダーBDZ-SKP75。スカパー!HD録画機としてのレビューをお届けする。(2012.3.16)

外観 – 謎のボタン配置

BDZ-SKP75に限らず、ソニーの最近のBDレコーダーでは、フラッグシップモデルを除いて、上半分が黒、下半分がグレーという色使いになっているのだが、BDZ-SKP75では、差別化なのかコストダウンなのかはともかく上下とも黒になっており、一目で同シリーズの他モデルと区別が付くようになっている。パーツの配置としては本体の左側にBDトレイ、右側に表示パネルなどがあるのだが、BDトレイがある左端に電源ボタンがあり、ディスクのイジェクトボタンは右端に付けられている。そのため筆者は使用開始当初、BDトレイを開けようとして電源を切ってしまうことが何度もあった。BDトレイのそばにイジェクトボタンが配置されている方が自然だと思うのだが、なぜこのような配置になっているのか謎である。

また、本体右側にマトリクス方式の表示パネルがあり、数字だけでなくアルファベットも表示できるようになっている(日本語は表示できない)が、電源を切ると現在時刻すら表示されず、何も表示されない状態になる(録画予約があることを示すランプなどは点灯する)ため、電源を切ってしまうと、遠目には通電しているのかどうかも分からない状態になる。

起動時に毎回ファームウェアのアップデートが表示される

電源投入時に毎回表示される

電源投入時に毎回表示される

BDZ-SKP75にも他の製品と同様に放送波によるファームウェアのアップデート機能があり、設定で自動アップデートを行うかどうかをユーザーが選択できる。しかし、この自動アップデートの仕組みはこれまでにも各社とも数々の事故を起こしてきた歴史があるため、筆者は常にオフにしている。しかし、BDZ-SKP75はファームウェアのアップデートが存在する場合、電源を入れるたびに毎回そのことを告知するメッセージが表示され、決定ホタンをクリックするまで次の操作に進めない。ユーザーに自動でアップデートしない、という選択肢を与えておきながら、アップデートするまでしつこく告知し続けるというのは仕様として矛盾していると感じる。

ICカード流用不可

他の機種ではなく、BDZ-SKP75をわざわざ選んで購入するユーザーは、新たにスカパー!HD加入する意思あるか、あるいはすでに加入していてチューナー・レコーダーを置き換えるつもりであるかのどちらかだろう。後者の場合、すでにスカパー用のICカードは持っているわけだが、このICカードをBDZ-SKP75に挿しても(形状は同じなので、挿さるには挿さる)放送を受信することはできない。BDZ-SKP75でスカパー!HDを受信するためには、スカパーJSATに申し込んで専用のICカードを送ってもらう必要がある。

しかし、これでは一体何のためにCAS(限定受信システム)として着脱可能なICカードを使用しているのか分からない。手持ちのカードをそのまま使用できるようにすべきだろう。

ちなみにICカード送付の申し込みの際、使用するチューナーがソニー製かシャープ製かは聞かれるが、製造番号などは聞かれないため、実際に購入する前にあらかじめICカードの送付だけ申し込んでおくことができる。申し込んだ日から数えて3日程度で届くようなので、BDZ-SKP75の購入を予定している人はあらかじめICカードの送付を申し込んでおくとよいだろう。

受信レベルビープ音が鳴らせない

アンテナレベルはグラフと数字のみ

【BDZ-SKP75】 アンテナレベルはグラフと数字のみ

グラフと数字に加えてビープ音も鳴らせる

【DST-HD1】グラフと数字に加えてビープ音も鳴らせる

スカパー!は受信条件が厳しいため、アンテナ設置後にmm単位で微調整をする必要がある。このとき少人数でも作業を行えるように、同じソニー製の単体チューナーであるDST-HD1には受信レベル確認画面で受信レベルの数値・グラフだけでなく、受信レベルに合わせたビープ音も鳴らせるようになっている。受信レベルが上がるほど高い音が鳴るようになっていて、ベランダなどでアンテナの調整をしている人は窓辺に置いたテレビのスピーカーから聞こえるこのビープ音を聞きながらアンテナ位置の調整を行うわけだ。しかし、BDZ-SKP75にはこのビープ音を鳴らす機能がないため、調整時はもう一人の人が画面に表示される受信レベルを見ながらアンテナを調整している人に指示をする必要がある。アンテナのすぐそばまで小型のモニターでも引っ張ってこない限り、一人でアンテナ調整を行うのは困難だ。

重複を排除することはできるが…

BDZ-SKP75の録画予約は単独予約(一回だけ録画)、毎週・毎日(月~土など)録画、番組名録画があり、最後の番組名予約録画が本機を含むソニー製レコーダーの特徴となる。特に、スカパー!HDの番組をこの番組名録画予約した場合、スカパー!で多い、リピート放送(同じ回が何度も放送される)を重複して録画しないようになっている。だが、しかし、この重複録画排除はユーザーが使用の有無は選択することはできず、番組名録画予約を行うと自動的に適用される。ということは、「番組名録画予約を使用して、リピート放送の各回を全部録画する」ということは行えないのである。

スカパー!の番組は地上波やBSとは違って多くの番組がコピーワンスで放送されている。また、上述の通りスカパー!HDは受信条件が厳しく、天候不良などで受信エラー(ブロックノイズや、音飛びが発生する)となることがしばしばある。そこで筆者は、リピート放送される番組はその各回を予約録画し1回目の放送に受信エラーがあれば、2回目の放送を録画したものを保存する、という使い方をしてきた。しかし、DST-HD1では録画予約を35件までしか登録できないという制約があるため、例えば本当は4回リピート放送される番組であっても、2回目までの録画予約にとどめざるを得なかった。そこで、BDZ-SKP75には番組名を指定して予約すれば1件の予約で各回ともすべて録画してくれることを期待していたのだが、それはできないわけだ。

結局、複数回のリピート放送はすべて1つづつ個別に予約登録することにしている。幸い、BDZ-SKP75は録画予約件数の制限が緩いため、すべて別々に録画予約を登録しても上限数に引っかかることがないからだ。しかし、このような方法で録画したものはクロスメディアバー(XMB)上で「フォルダ整理ボタン」を押してフォルダ表示に切り替えても番組名のフォルダにはならない。(ただし、フォルダ整理→マーク→マークなし とたどると番組名ごとのフォルダ表示にすることは可能だが、DLNAクライアント機器側の画面には表示されない)

DLNAサーバー機能は常時稼動

BDZ-SKP75はDLNAサーバー機能を持っている。(ただし、クライアント機能はない) そのため、PlayStation3などDLNAクライアント機能を持っていてDTCP-IPに対応している機器から、BDZ-SKP75で録画した番組を再生できる。このDLNAサーバー機能はBDZ-SKP75の電源を切った状態でも稼働しており、DLNAサーバー機能を使うためにわざわざBDZ-SKP75の電源を入れる必要はない。これは、アイ・オー・データ機器のレコーディングHDDであるHVL-AV1.0でも設定によって同様にできるが、東芝のRDシリーズでは電源を切ると、DLNAサーバー機能も停止してしまうため、それと比べて便利である。なお、HVL-AV1.0やRDシリーズの画面からはダビング先としてBDZ-SKP75が選択肢に表示されるが、実際には対応しておらず、ダビングを行おうとすると失敗する。

ウェブインターフェースがない

東芝のRDシリーズやPanasonicのDIGAシリーズはウェブサーバーの機能を持っており、ウェブブラウザからアクセスして、録画されている番組を一覧を見たり、録画予約を登録したり、またRDシリーズでは録画された番組の番組情報を編集することまでできる。しかし、BDZ-SKP75にはこのような機能はなく、外部からの接続はDLNA経由のみとなる。chan-toruというインターネットサービスを使用すると外出先からでも、BDZ-SKP75に録画されている番組や録画予約の一覧、HDDの残り容量などを確認することができる。しかし、宅内で手元のレコーダーの状態を知るためであってもわざわざインターネットを経由しなければならないというのは、面倒だ。

選択している番組だけをBDにダビングできない

RDシリーズでは編集ナビ画面で番組を選んでいる状態で決定ボタン→ダビング→…と進んでいくとその番組をBDなどにダビングできる。しかし、BDZ-SKP75ではダビングしたい番組にカーソルを合わせてオプションボタン→ディスクにダビング→選択ダビング と進んでも改めて録画番組の一覧の中からダビングしたい番組を選択する操作が必要になる。(一応、オプションボタンを押す前にカーソルを合わせていた番組にカーソルが合った状態にはなっている)。そのため、「今見た、この番組だけをBDに保存したい」というときにはRDシリーズなどと比べて一手間余計にかかることになる。

PCで焼いたREに追記可能

BDレコーダーで放送番組などを保存したBDはBDAVというアプリケーションフォーマット(DVDでいうとDVD-VRにあたるもの)で記録されるが、このBDAVディスクはPCでも作成可能だ。東芝のRDシリーズではPCで作成したBDAVディスクを読み込ませると、ディスクに問題があるため再生しかできない、というメッセージが表示されてBDAVからHDDへのダビングやBDへの追記などはできない。しかし、BDZ-SKP75ではこのようなディスクでもHDDへのダビングやHDDからの追記ダビングを行うことができた。また、PCで設定したディスクラベル名もきちんと認識していた。

しかし、筆者が試した限りでは、HDVカメラで撮影した映像をPCでキャプチャして無劣化でBDAV化したものをBDZ-SKP75のHDDにダビングしカット編集を行った場合、HDDからBDへのダビングは高速ダビング(再エンコードしない)なら問題なかったが、再エンコードを行いながらダビングしようとするとエラーになる。ソニーによれば放送を録画したもの以外の処理はサポートの対象外とのことだ。

カット編集精度は

【図】今回の検証のフローと構成

BDZ-SKP75には録画した番組を編集する機能があり、操作上はフレーム単位でのカットやチャプタポイント指定ができるようになっている。そこで、フレーム単位のタイムコードをあらかじめ焼き込んだ映像をPCの編集システムからHDMIで出力し、変調器でISDB-T(日本の地上デジタル放送の規格)形式のRF信号に変調して、それをBDZ-SKP75の地上デジタルチューナーで受信させてDRモードで録画してから、プレイリスト作成とタイトル分割を行って、BDZ-SKP75の編集精度を検証した。

今回使用した素材は、こちらの番組の元になった映像にタイムコード表示やウォーターマーク(局ロゴ)を載せたものである。

【検証の流れ】

テストストリームを録画

テストストリームを録画した後、タイトル分割機能でテストストリームの前後に付けてあった余白を削除し、BDZ-SKP75の画面上のタイムコード表示と映像に焼き込まれたタイムコードが一致するようにしてある。 これを高速モードでBDAVにダビングしたファイルが00001.m2ts

プレイリスト作成画面

プレイリスト作成画面【1】 15秒00フレームを開始点位置として指定。

プレイリスト作成画面

プレイリスト作成画面【2】 44秒29フレームを終了点として指定。 このプレイリストを高速モードでBDAVにダビングしたファイルが00002.m2ts、XRモードでダビングしたファイルが00003.m2tsである。

タイトル分割画面

タイトル分割画面【1】 15秒00フレームで分割。

タイトル分割画面

タイトル分割画面【2】 【1】で分割したファイルをさらに、30秒00フレーム(映像に焼き込まれているタイムコードでは45秒00フレーム。プレイリスト作成画面で終了点と指定した次のフレーム)で分割。 BDAVに高速モードでダビングしたファイルが00004.m2ts、XRモードでダビングしたファイルが00005.m2tsである。

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まず、録画したものをタイトル分割機能で前後の余白を削除し、BDZ-SKP75の画面上のタイムコードと映像に焼き込まれたタイムコードが一致するようにして、高速(DR)モードでBDAVとしてダビング(コピー)したものが、00001.m2tsである。


編集作業の概要。元の映像(60秒間)の先頭から数えて15秒目から45秒目までの30秒間を取り出す編集を行う。

つづいて、プレイリスト作成画面で、タイムコード15秒00フレームから44秒29フレームまでを範囲とするプレイリストを作成。これを高速モードでBDAVにダビングしたものが00002.m2ts、XRモードでダビングしたものが00003.m2tsである。

次に、元のストリームをタイトル分割画面で、まず15秒00フレームで分割し、分割した後半分をさらに30秒00フレーム(映像に焼き込まれているタイムコードでは45秒00フレーム。プレイリスト作成時の終了点の次のフレーム)で分割。これを高速モードでBDAVにダビングしたものが00004.m2ts、XRモードでダビングしたのが00005.m2tsである。

これらのm2tsファイルをPCに読み込んで、TMPGEnc 4.0 XPressで解析してみると、高速モードでダビングしたものはプレイリスト(00002.m2ts)でもタイトル分割(00004.m2ts)でも、まったく同じものになり、映像に焼き込まれているタイムコードで14秒10フレームから、45秒24フレームまでが記録されていた。ただし、先頭8フレームは14秒10フレーム偶数(EVEN)フィールドだけ、最終1フレームは45秒24フレームの奇数(ODD)フィールドだけだった。

一方、プレイリストからXRモードに変換しながらダビングしたもの(00003.m2ts)は、先頭5フレームが15秒00フレームの奇数(ODD)フィールドのみで、6フレーム目からは15秒01フレーム以降の両フィールドが記録されており、末尾は44秒29フレームの両フィールドの後に、44秒29フレームの奇数フィールドのみが4フレーム記録されていた。

分割タイトルからXRモードでダビングしたもの(00005.m2ts)は00004.m2tsの先頭と最終の1フレームずつが無い状態で記録されていた。

つまり、いずれの場合も、XRモード(他の高速(DR)以外のモードでも同様と思われる)に変換すると先頭フレームの偶数(EVEN)フィールドが欠落することになる。

今回作成したBDAVファイルストラクチャ
(リンクから各ファイルをダウンロードできます。一括ダウンロードはこちら。352MB。)

BDAV

CLIPINF

00001.clpi
00002.clpi
00003.clpi
00004.clpi
00005.clpi

PLAYLIST

00001.rpls
00002.rpls
00003.rpls
00004.rpls
00005.rpls

STREAM

00001.m2ts
00002.m2ts
00003.m2ts
00004.m2ts
00005.m2ts

info.bdav

今回の編集作業を通じて他に分かったこととしては、BDZ-SKP75では、一時停止中に早送り・早戻しボタンを押すと1フレーム単位で移動できるが、早送りを押した場合は奇数(ODD)フィールドが表示され、早戻しボタンを押すと偶数(EVEN)フィールドが表示される。また、早戻しボタンを押して偶数フィールドが表示されている状態で早送りボタンを押すと、同じフレームの奇数フィールドが表示される仕様になっているということだ。これは編集作業時だけでなく、再生時にも共通のようだ。しかし、操作画面にはフレーム番号までしか表示されないため、ユーザーからすると「早送りボタンを押しているのに、フレームが進まない(実際には1フィールド進んでいるのだが、フレーム番号は変わらない)」という現象が起こることになり、わかりにくいと思う。これは、両フィールドからなる完全な1フレームで静止すると、ちらつきや櫛形ノイズが発生して見づらいことへの配慮だと思われるが、それなら表示するフィールドを奇数・偶数のどちらかに統一すべきだろう。

なお、タイトル分割ではなく、部分削除機能で前後の余白を削除した場合、ダビングしたディスクには指定範囲のフレームが欠落無く含まれていたが、BDZ-SKP75での再生時に先頭10フレーム程度が表示されない現象が見られた。また、ムーブ対象となるコンテンツ(コピーワンスや、ダビング10で9回ダビング済みのもの。スカパー!HDは基本的にコピーワンスでの放送である。)の場合、プレイリストからのダビング(ムーブ)はできない仕様となっているため、この場合は常に部分削除よりもタイトル分割機能を使う方がよいだろう。(RDシリーズではムーブ対象コンテンツの一部をダビング(ムーブ)すると、残りのコンテンツは、その部分だけが切り詰められた状態になる)

とはいえ、東芝以外の各社が編集機能をどんどん簡略化していく中で、曲がりなりにもフレーム単位での編集が行えるのは意外であった。

同時動作制限

最近のBDレコーダでは同時に複数の処理をできないという制限をいかになくすかが各社の腕の見せ所となっている。BDZ-SKP75も高速ダビングであれば、録画中でも行えるが、再エンコードを伴うダビングは録画中は行えない。たとえDRモードでの録画中(つまり、エンコーダが稼動していない)であってもだ。なお、ダビングはバックグラウンドで行われるため、ダビングが始まってしまえば、そのままダビングの進捗を表示させておくこともできるし、他の操作を行うこともできる。ただし、ダビング画面を閉じてしまうとダビングにかかる所要時間が延びる。

その他

番組表画面

番組表画面 ※表示内容は架空のものです。

BDZ-SKP75の番組表(EPG)は全画面表示となり、視聴中の番組の音声は聞こえるが映像は見られない。また、DIGAシリーズのように広告が表示されることも無い。また、9チャンネル/6時間表示、7チャンネル/4時間表示、4チャンネル/3時間表示の3段階で切り替えられる。

筆者が購入した個体の出荷時のAACS MKBはv16であった。また、2012年3月28日から行われている放送波アップデートを実施しても変化しなかった。

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