アイ・オー・データ動画デジカメAVMC321レビュー


ムービーカメラというジャンルそのものの衰退に伴い、すでに終わったものと思っていたアイ・オー・データ機器のムービーカメラ「MotionPix」シリーズに4世代目となるAVMC321が登場した。早速入手し動画撮影機能を中心にレビューしてみた。

今回使用したのは、アイ・オー・データ機器のインターネット直販サイトである「ファクトリストア」限定で販売されている128MBマルチメディアカード付きシルバーモデル。今時マルチメディアカード、しかも128MBというのは、どう考えても売れ残った商品の在庫処分としか思えないがそれはまぁいいとして、ファクトリストア限定と言っておきながら、セブンドリーム・ドットコムでも「セブンドリーム限定シルバーモデル」としてまったく同じものを売っているのは問題だと思うのだが。

前機種とはまったく別物のハードウェア

AVMC321は製品としてはAVMC212の後継機種となるが、ハードウェアは前機種とはまったく別物で、上海問屋DN-DV610と同じOEM元の製品と見られる。

電源は専用リチウムイオン電池で、付属するACアダプタを接続するコネクタはPCとの接続のためのUSB端子と共用になっている。PCとの接続と充電は同時には行えない。

回転式液晶ディスプレイを装備

AVMC321には回転式液晶ディスプレイが搭載されている。ビデオカメラでは当たり前となっているがムービーカメラではNHJDV-5(5万9800円)に搭載されていたくらいで、低価格ムービーカメラに搭載されたのはこれが初めてではないだろうか。

AVMC321の液晶ディスプレイは270°回転するもので、レンズの方(=被写体の方)に向けたり、液晶面を外に向けたまま閉じることもできるようになっている。ただし、液晶ディスプレイを開いた状態では自分自身の重さで倒れてしまい、自立できないので手で持つか三脚などに固定する必要がある。

液晶ディスプレイを開くと自動的に電源が入り、閉じると切れるようになっている。電源ボタンもあり、手動での電源オン・オフもできる。

カードスロットは電池蓋の中

AVMC321では記憶メディアにSDカードを使用するが、SDカードスロットは電池のそばにあり、出し入れのためには電池蓋を開ける必要がある。この電池蓋は開けると本体から完全に外れてしまうタイプのものでいかにも安っぽい。DV-4AVMC212と違って、蓋を開けても通電は切れないようになっているが、SDカードスロットは押し込むと装着され、もう一度押し込むと排出される機構になっているのだから、v:u2のようにスロットが蓋なしでむき出しの方が便利だと思う。

手ぶれ補正機能を搭載

AVMC321には電子式の手ぶれ補正機能が搭載されている。この手ぶれ補正機能と最大8倍のデジタルズーム機能は排他使用になっており、手ぶれ補正機能を有効にするとデジタルズーム機能は使えなくなる。

手ぶれ補正機能はメニュー画面からオン・オフを切り替えるのだが、手ぶれ補正機能をオフにしてデジタルズームを使用した状態で、手ぶれ補正機能をオンにするとデジタルズームの倍率が直前の状態で固定され元に戻すこともできなくなる。仕様どおりと言えばその通りだが、1.0倍(つまり、デジタルズームを使用していない状態)に戻る方が自然ではないかとも思う。

ピントは手動三段階切替

固定焦点の低価格デジカメではピントを通常とマクロ(接写)の二段階で切り替えるようになっているものが多かったが、AVMC321では、レンズ上部についているツマミで「マクロ」「人物」「遠景」の三段階で切り替えるようになっている。携帯電話のカメラですらオートフォーカスになってきている今となっては時代遅れの感が否めない仕様だ。マクロ以外に、2種類のモードがあるため、かえってどちらにすればいいのか分かりにくい。割り切って常に遠景にしておき、被写体から1.4m以上離れて撮るようにするのがいいと思う。

画角は狭め

デジタルズームを使用していない状態でも画角は随分狭い。Che-ez! Movixで同じ場所から撮影した動画と比べると半分くらいの範囲しか入っていない。Movixの焦点距離は35mmフィルムカメラ換算で43mmなのでAVMC321は80mmくらいになるのだろうか。この画角をどうとらえるかはユーザーによるが、光学ズームがないことを考えるとこのくらい寄っていた方がいいのかもしれない。


▲ Che-ez! Movixで撮影

▲ AVMC321で撮影

 

動画撮影モードは3種類

AVMC321の最大の特徴は動画の圧縮形式が従来までのMotionJPEGやASFからXviDになったことである。XviDはDivXの流れを汲むオープンソースの動画圧縮フォーマットとして知られるMPEG-4系の動画圧縮フォーマットで、DVD並みの画質で容量がより小さくて済むことからテレビ番組のキャプチャなどにも使われ、いわゆるメディアプレーヤやネットワークプレーヤと呼ばれる機器の多くでも再生できる。

動画の撮影モードは640×480ドットで1.8Mbpsの「高」、640×480ドットで1Mbpsの「標準」、320×240ドットで500kbps「低」の3種類があるが、常に「高」で撮影するのがよいと思う。特に「標準」は解像度のわりにビットレートが低いためブロックノイズがひどいので使わない方がよいだろう。

音声は前機種のADPCM 24kHz 4bitからMPEG1 Audio Layer-2(MP2) 44.1kHzになり、格段に聞き取りやすくなった。前機種では何を言っているのか分かる程度だったが、AVMC321では普通に聞き取れるようになった。サンプル動画の撮影中、付近で鶯が鳴いていたのだが、その鳴き声もきれいに収録されていた。ただしモノラルである。

「高」で撮るとテレビに映したときの画質は体感的にはコンシューマ向けソフトを使って素人が作成したビットレート4Mbps弱のDVDくらいだろうか。ブロックノイズはあるもののまぁ見られる画質ではある。子供の入学式や運動会、結婚式といった大事な映像にはまったく向かないがちょっとした行楽や、会社での会議の記録などに使うにはよいのではないだろうか。

【動画サンプル】
動画サンプル
20050702_barbecue.avi

「高」モードで撮影。640×480ドット XviD形式MPEG-4 4.58MB再生するためにはXviDコーデックが必要です。
こちらからダウンロードしてください。
ffdshowをインストールした環境でもご覧いただけますが、一部ノイズが入る場合があります。20050702_barbecue.wmv
AVMC321に添付のVideoStudio 8 SE Basic(内部的にWindows Media エンコーダ9を使用)で320×240ドット、700kbpsのWMV形式に変換したもの。

 

【音声サンプル】
20050702_uguisu.wav
「高」モードで撮影した動画からAVMC321に添付のVideoStudio 8 SE Basicで44.1kHz 16ビットモノラルのWAVE形式に変換したもの。音量は元の2倍にしてある。

MotionPixの前の機種までは解像度やフレームレートが低く、それを編集とか再エンコードして何かを作ろうという気にはならなかったが、AVMC321ではVGAサイズでそこそこの画質で撮れるため、とりあえず撮影しておき、カット編集などをした後で320×240ドットのMPEG1やWMV形式に出力すればそれなりのものができると思う。ウェブに掲載したり、ファイルサーバー上に置いて社内の人に見てもらうにはいいと思う。

ただし、作成されるAVIファイルは音声がMP2なので、ツールによってはうまく処理できない。例えばMPEGエンコーダソフトとして有名なTMPGEncの無料版(バージョン2.254)では音声を処理できず、無音のMPEGファイルしかできなかった。また、AVIファイルから音声部分を分離するAVI2WAVAVI Cutterでも正しく処理できなかった。

筆者が試してみた限り、AVMC321で撮影した動画を映像・音声ともに正しく処理できたのはAVMC321に付属しているVideoStudio 8 SE Basicにアップデータを適用(後述)したものだけだった。撮影したファイルを編集したい場合は、このソフトを使っていったん、無圧縮あるいはDV圧縮のAVIや、MPEGのような汎用的なフォーマットに変換してから上記のようなソフトに取り込むようにした方がよいだろう。

付属ソフトはアップデータの適用が必須

AVMC321にはユーリードの「VideoStudio 8 SE Basic」「DVD SlideTheater 2 SE」「PhotoImpact 10 SE」が添付されているが、「VideoStudio 8 SE Basic」「DVD SlideTheater 2 SE」は添付CD-ROMに収録されているバージョンではAVMC321で撮影した動画ファイルの音声(MP2形式)を処理できず、エラーになってしまう。製品の箱の中にはアップデータを適用するように書かれた紙片が入っているが、これのことを指しているものと思われる。当初AVMC321の発売が6月下旬とされながら、実際には6月末ぎりぎりになったのはこれの対応が原因だったのかもしれない。

静止画撮影機能も地味に性能向上

AVMC321は動画撮影に主眼が置かれた製品ではあるが静止画も撮影できる。これまでのMotionPixシリーズで撮影した静止画はいかにも低価格CMOSカメラのものだったが、AVMC321ではCMOSの性能向上もあってか、XGAサイズ程度に縮小して見るには結構解像感のある画像が得られる。動画同様、ウェブでの掲載や、(印刷はせずに)画面上での閲覧にはいいと思う。

おまけ程度のMP3再生機能

AVMC321には前機種と同様、MP3再生機能も搭載されているが、機能・音質ともに特に高くもなく、おまけ機能の感は否めない。機能が付いているのは悪くないが、特に使う価値も無いように思う。

ただ、このMotionPixシリーズはその安さと小ささからオートバイ愛好家たちに車載カメラとして絶大な人気があるらしく、同社のサイトでもそういう使い方が紹介されており、MP3プレーヤ機能についても「ツーリング先でも好きな音楽を聴く」(という使い方ができる)と書かれている。荷物を少しでも少なくしたい状況では最低限の機能しかないとはいえ、カメラとMP3プレーヤが同一筐体になっているのは便利なのかもしれない。

動作の安定性に難あり

AVMC321を使用していて気づいたこととして、撮影した動画を本機で再生しようとするとサムネイルではなく「!」マークの付いたフォルダのアイコンが表示されるだけで再生できないことがあった。また、サムネイルは表示されるものの再生ができないこともあった。また、静止画を1枚撮影するたびにSDカードに「100PHOTO」「101PHOTO」「102PHOTO」…とフォルダが作られ、その中に1つずつ画像ファイルが作られることもあった。また、SDカード装着時にはSDカードにしか記録されない仕様であるにもかかわらず、SDカード装着時にも本体メモリに記録されてしまうこともあった。動作の安定性にやや難があるようだ。

まとめ

ムービーカメラは一時期に比べると市場が縮小しており、機種数も少なくなっているためどうしても通常のDV方式のビデオカメラや動画撮影機能付きの通常のデジカメと比較され、不利な評価を受けていることが多いが、それらとは別のカテゴリの製品であると考えれば、値段の割りによく撮れると言えるだろう。

むしろ、デジカメともビデオカメラともつかない製品であるため小売店としては扱いづらく、あまり店頭に並ばないということの方が問題かもしれない。NHJのデジカメが自社ブランドでの販売から大手小売店と組んでのOEMにシフトしていったのも同様の背景があるのだろう。

今後は低価格を維持しつつもHDD搭載など、機能の向上を図り、製品ジャンルとして確立されることを期待したい。